会社更生のメリット・デメリット
会社更生とは、会社が負っている債務が支払不能になったり、超過した時に、経営を継続したまま会社を建て直す裁判上の手続きのことをいいます。会社更生は、具体的に以下の手順によって進められます。
① 会社更生手続の申請
会社更生は、裁判上の手続きであるため、裁判所に申し立てる必要があります。なお、申立てをするには、
1 破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれがある場合(会社更生法17条1号)
2 弁済期にある債務を弁済することとすれば、その事業の継続に著しい支障を来すおそれがある場合(同法同条2号)
である必要があります。申立てが適法になされたときには、裁判所が財産の保全命令を出し、これにより、会社債権者は、会社に対して債務履行請求や強制執行による申立てをすることができなくなります。
② 会社更生手続の開始
基本的に、会社更生手続がされた時は、経営者は全員退任します。そして、会社の財産を管理する更生管財人と呼ばれる人が選出され(同法67条)、以降は管財人が更生手続を進めていくこととなります。
③ 更生計画案の作成及び決議
更生管財人は、会社の財産や経営の状況等を確認し、どのように会社を建て直していくか計画を練り、債権者に対して承諾を得ることを必要とします。
ここで、債権者の承諾は、権利ごとに必要となる割合が異なるため、注意しなければなりません(同法196条1項)。
具体的には、
1更生債権においては、議決権を行使することができる更生債権者の議決権の総額の2分の1を超える議決権を有する者(同法196条5項1号)
2更生担保権の期限の猶予の定めをする更生計画案においては、議決権を行使することができる更生担保権者の議決権の総額の3分の2以上に当たる議決権を有する者(同法同条同項2号イ)
といったように、詳細に定められています。
④ 更生計画の認可及び遂行
関係者集会において、更生計画案が可決された時には、裁判所から認可が下ります。その後は、更生管財人のもと、更生計画に従って業務遂行されることとなります。
では、更生計画をするにおいて、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。以下説明します。
■メリット
① 全債権者が更生手続に従うことになる
会社再建の手続きとして、「民事再生」と言われる制度が存在します。債務の一部を免除してもらい、期限を決めて残部を返済していく制度であり、会社を建て直すためには非常に有効な手立てと言えます。
ただ、民事再生手続をしても、債権に付されている担保権までは消滅することがないという特質があるので、担保権を行使されて自らの財産が減ってしまうおそれがあります。
それに対して、会社更生手続は、担保権を含めた全ての債権者に妥当するため、手続を申立て、裁判所が開始をした時は、担保権を実行することができなくなります。
※担保権とは、抵当権や質権といった、債務を支払わなかった時に、補填される財産のことをいいます。
② 他の倒産手続に優先される
会社更生手続は、法人破産や民事再生といった他の倒産手続に優先されます(会社更生第一主義)ので、民事再生手続を開始した後でも、会社側は、会社更生手続をすることができます。
■デメリット
① 経営者は全員退任する必要がある
経営者は、責任をとって全員退任し、以降は更生管財人によって会社更生が進められなければなりません。よって、自らが経営者として存続したい場合には、この手段を取ることはできませんので注意が必要です。
② 株式会社のみでしか運用できない
会社更生は、比較的大企業が経営を建て直すために想定された法律であるため、株式会社のみしか適用できません(同法2条7項)。
また、その他にも、会社更生には、長期間の時間を要し、また裁判所への予納金が高額になる等の金銭上のデメリットも存在します。
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