パワハラの加害者に退職勧奨を行うことは違法?
社内でパワハラによるトラブルが発生した場合に、加害者に対してどのような対応を取るか思案されている管理職や経営者の方から相談をいただくことがあります。
その中でも、パワハラの加害者に対して退職勧告を行うことは違法とならないかといった、ご相談が多くみられます。
当記事では、社内でのパワハラ問題について詳しく解説をしていきます。
パワハラとは
近年ではパワハラによるトラブルが非常に多くなっています。
パワハラによる退職勧告を行う前に、まずはどのような行為がパワハラに該当するのかといった点や、認定の基準について明確にしておく必要があります。
パワハラの定義は厚生労働省によって次のように定義されています。
上記の定義では非常に抽象的であり、なおかつパワハラにもさまざまな種類や程度があります。
・身体的な攻撃
殴る蹴るといったように物理的に相手の体に触れる行為だけではなく、体に触れていないものであってもパワハラに該当することがあります。
物理的なものは書類で頭を叩いたり、物を投げつけるような行為などさまざまなものが考えられます。
他方で体に触れていないから問題ないと思われるような行為であっても、身体的な攻撃にあたるようなものとしては、デスクを蹴ったり物に当たって威嚇するような行為が挙げられます。
・精神的な攻撃
脅迫めいた発言や暴言、侮辱、名誉毀損発言などは、相手に精神的なダメージを与えるパワハラに該当します。
こちらも直接相手に向かって発言するだけではなく、メールや電話などを利用した場合であっても精神的な攻撃に該当します。
また長時間に及ぶ叱責などは、正当な業務範囲のように思われますが、パワハラに該当する可能性があるため注意が必要となります。
・社内での孤立
社内での人間関係から孤立させたり隔離させるような行為もパワハラに該当します。
このような場合には、簡単に隔離や仲間はずれなどを認定することができますが、それらが意図的なものであるかの判断が難しくなっています。
具体的な事例としては、忘年会などの社内イベントに1人だけ呼ばれていないような場合や同僚に話しかけても無視をされているような場合、また上司が他の社員に対して孤立させるために根回しをしているような場合などが挙げられます。
・過大な要求
1人で遂行するには難しい業務や長時間の労働を要するような業務を強いる行為は過大な要求に該当します。
新入社員や1人の社員に対して、「明日までに終わらせろ」といったような要求や、残業や休日出勤の強要などがこれに当たります。
また、職務を逸脱し、プライベートでの雑用などを強制するような行為も過大な要求に該当することがあります。
・過小な要求
過大な要求とは反対に、相手の能力を明らかに大きく下回るような仕事を命じたり、仕事そのものを与えない場合には、過小な要求に該当します。
営業や経理などの分野で採用をしたにもかかわらず、電話番やお茶汲みなどしかやらせない、単純作業だけをするように命じるようなものが具体例として挙げられます。
パワハラ加害者に対して退職勧告は可能か
実はパワハラを理由に退職を促すことができる例は非常に稀有なものとなっています。
パワハラの程度にもよりますが、基本的には口頭での注意、減給、長・短期間の出勤停止などが主な懲戒内容となります。
もっともパワハラの中でも長期間継続的に行われたようなものや悪質性の高いものに関しては懲戒解雇などを行うことができます。
パワハラに関する知識が十分でない状態で懲戒解雇を行うと、のちに不当解雇として訴えられてしまう可能性があるため注意が必要となります。
まとめ
社内でパワハラに関する規定の見直しを行う際等には、まずは専門家に相談をすることをおすすめいたします。
労務問題に関してはできるだけ早い段階で相談をすることがスムーズな解決の糸口となります。
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弁護士紹介
弁護士 中辻 大輔 (なかつじ だいすけ)
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- 平成31年 中辻綜合法律事務所設立
- 大阪弁護士会
弁護士 野村 倖基 (のむら こうき)
- 令和5年 弁護士登録
- 同年 中辻綜合法律事務所入所
- 大阪弁護士会
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