自己破産における免責とは?おりなかった場合はどう対処する?
現在借金問題でお困りの方は、債務整理手続きを視野に入れたことがあるという方が多いことと思います。
債務整理手続きは主に、任意整理、個人再生、自己破産の3つがあります。
任意整理と個人再生は、借金を減らしてもらった上で、3〜5年の期間をかけて引き続き返済をしていく手続きであり、自己破産は裁判所に申し立てを行なって、債務を免除してもらい、以後の支払い義務がなくなる手続きです。
この債務を免除することを免責といい、裁判所から免責許可決定がなされることで、借金の返済義務がなくなります。
本稿では、自己破産における免責が下りなかった場合の対処法について解説していきます。
免責における注意点
裁判所が免責をするか否かの判断をするにあたっては、破産申し立てを行なった人が免責を認められない事由がないかについての確認を行います。
これを免責不許可事由といいます。
免責不許可事由には11種類あります。
・不当に財産を減少させる行為
自己破産は債務を免除するという強力な効果がありますが、実際に債務がなくなった場合には債権者が債務を回収することができなくなってしまうため、破産者の財産を処分・換価した上で配当を行っていくこととなります。
そこで、自己破産手続きを開始する直近2年間で、破産者が自身の所有する財産を隠匿したり、誰かに譲渡することによって、財産を減少させる行為を行なった場合には、免責が認められなくなってしまうことがあります。
・不当に債務を負担する行為
破産手続開始を遅延させるために、不利益な条件で借入を行う行為は免責不許可事由に該当してしまう可能性があります。
例としては、闇金業者などから法外な金利で借入を行なったり、クレジットカードで購入した商品を売却してお金に変える行為などがこれに該当します。
・偏頗(へんぱ)弁済
自己破産について規定している破産法では、債権者平等の原則が採用されています。
そのため、特定の債権者に対してのみ返済を行う、偏頗弁済と呼ばれる行為が禁止されています。
自己破産の対象となる債務の中には親や友人からの借金についても含まれており、このことを知らずに返済してしまったという例が発生してしまうことが少なくないため、注意が必要となります。
・収入に見合わない浪費やギャンブル
収入に見合わない娯楽のための浪費やパチンコ、競馬、株などのために借入をした場合には、免責が認められない可能性があります。
・相手を騙した信用取引
実際には返済能力がなかったり、返済が難しいにも関わらず、借金をする行為については、免責が認められない可能性があります。
・帳簿などの財産に関する書類を隠す行為
自己破産を利用する場合には、裁判所にさまざまな資料を提出する必要があります。
その提出する資料を偽装したり、隠したりする行為は免責不許可事由とされています。
・虚偽の債権者名簿の提出
債権者名簿に存在しない債権者を記載したり、本来いるはずのない債権者を記載しない行為は、免責不許可事由とされています。
前述しましたが、自己破産については家族や友人からの借金についても対象となっているため、これらについてもしっかりと記載する必要があります。
・虚偽の説明や説明の拒否
自己破産手続きでは裁判所書記官や破産管財人と面談をする機会があります。
その面談において虚偽の説明や説明自体の拒否をする行為は免責不許可事由とされています。
・管財業務の妨害
自己破産が管財事件と呼ばれるものになった場合には、破産管財人が選任され、財産の処分や破産者の調査を行なっていきます。
この破産管財人の業務を妨害する行為は免責不許可事由となるため、業務には全面的に協力する必要があります。
・過去7年以内に免責を受けている
過去7年以内に自己破産を利用し、免責を受けている場合には、原則として免責はおりません。
・手続きに協力しない
財産内容の不開示や調査協力を拒否するような、手続きに対して非協力的な態度を取ると、免責を受けることができなくなる可能性があります。
免責がおりなかった場合の対処法
・即時抗告
免責不許可が決定した場合には、官報に掲載された翌日から2週間以内に即時抗告を行うことができます。
もっとも、即時抗告を利用したとしても、決定が覆る可能性は低くなっています。
・その他の債務整理手続きを利用する
冒頭でも少し触れましたが、自己破産以外の債務整理手続きがあるため、そちらの利用を検討することとなります。
任意整理も個人再生も借金の返済義務は残りますが、現状と比較すると返済の負担は大幅に減らすことができる可能性があります。
自己破産は中辻綜合法律事務所にご相談ください
自己破産を利用する際には、免責不許可事由に該当していないかといった点などを含めて、弁護士に相談をすることをおすすめします。
中辻綜合法律事務所では、自己破産をはじめとした、任意整理や個人再生などの債務整理手続きについても専門的に取り扱っておりますので、お困りの方はお気軽にご相談ください。
当事務所が提供する基礎知識
-
遺言書の効力について
■遺言書の内容遺言書に書いて効力を持つ内容を「遺言事項」といいます。遺言事項は限定されており、遺言事項に含まれない内容は遺言書に書いたとしても効力を有しません。■遺言書の形式遺言書の方式は厳しく定められており、方式を守っ […]
-
法人・会社の倒産手続...
法人または会社の倒産手続きとして、しばしば例に挙げられるものが「法人破産」や「民事再生」です。法人破産は、法人が負っていた債務を全て免除してもらう代わりに、法人格を失い消滅する手続きであり、民事再生とは、債務の一部を免除 […]
-
会社更生のメリット・...
会社更生とは、会社が負っている債務が支払不能になったり、超過した時に、経営を継続したまま会社を建て直す裁判上の手続きのことをいいます。会社更生は、具体的に以下の手順によって進められます。 ① 会社更生手続の申請 […]
-
自己破産すると所有し...
自己破産手続きを考えているが、所有している車がどうなるのかわからないといったご相談をいただきます。当記事では、自己破産をした場合の車の取り扱いやその他の財産についても解説をしていきます。自己破産での財産の取り扱い自己破産 […]
-
遺産分割協議の重要性
遺産分割協議は相続の中でも非常に重要な手続きになります。被相続人が亡くなった時点で、被相続人の相続財産は相続人の共有状態におかれることになります。これは仮の状態ですので、相続財産をどのように相続人間で分配するかを決定する […]
-
刑事事件の示談を成立...
示談とは、民事上の加害者と被害者の間の和解を指します。あくまで民事上の和解であり、刑事上の責任がなくなるわけではありませんが、刑事上も大きなメリットがあります。このメリットは段階別に以下の3つが挙げられます。 […]
よく検索されるキーワード
弁護士紹介
弁護士 中辻 大輔 (なかつじ だいすけ)
- 平成21年 弁護士登録
- 平成31年 中辻綜合法律事務所設立
- 大阪弁護士会
弁護士 野村 倖基 (のむら こうき)
- 令和5年 弁護士登録
- 同年 中辻綜合法律事務所入所
- 大阪弁護士会
事務所概要
倒産(再生)・中小企業の法律顧問(支援)・相続・交通事故等の民事から刑事まで幅広く手掛けております。迅速な処理と強力なサポートで、依頼者の利益のために結果を出せるよう尽力しています。
名称 | 中辻綜合法律事務所 |
---|---|
代表者 | 中辻 大輔(なかつじ だいすけ) |
所在地 | 〒540-0037 大阪府大阪市中央区内平野町2-3-14 ライオンズビル大手前1202号 |
TEL・FAX | TEL:06-6910-7370 / FAX:06-6910-7371 |
対応時間 | 平日 9:00~18:00 (事前予約で時間外も対応可能) |
定休日 | 土・日・祝 (事前予約で休日も対応可能) |
URL |